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【解説】
「ダビング10」騒動で、日本のコンテンツ市場を憂う

利用者を軽視したガチガチの著作権保護がコンテンツ産業を衰退させる

(2008年07月25日)

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コンテンツを衰退させるほんとうの元凶とは……

 一般に著作物は、「広く知られないと利益を生まないが、広く知らしめるために公開すると、生み出される利益は減る」と考えられている。テレビで映画を放送すれば、映画館に足を運んだ人以外にも広く知られるが、再上映の映画館に行く人やパッケージを買う人は減る。そう考えるからこそ、著作権者側は無料公開による利益の減少を補償金で取り戻したいと“努力”するわけだ。

 しかし、この考えはほんとうなのだろうか。映像や音楽のコンテンツを買う人の多くは、何らかの理由でそのコンテンツ(あるいはそのコンテンツにかかわった人物)が好きな人である。事前情報がまったくない映画や、一度も聞いたことのない音楽を購入する人は少ない。音楽の場合、売上げ上位となる曲は、街を歩いていても自然と耳に入る。1990年代、邦楽のヒットチャートで上位を占めていたのは、ドラマやテレビ広告のタイアップ曲ばかりだった。これはタイアップにより広く告知されたこと、つまり、“はやっている”ことの効果だった。

 一方、映画は音楽ほど繰り返し再生されないだろうが、DVDなどのパッケージを購入する人の多くは、その映画を観るために映画館に足を運んだ人ではないだろうか。

 現在、音楽業界ではCDの売上げが激減し、以前のようなミリオン・セラーが少なくなったと言われている。その原因の一端が、インターネットの普及にあることはまちがいない。ただし、それはインターネットによる不正なコンテンツ流通だけが理由ではない。Webページという“コンテンツ”の登場で、ユーザーがそのほかのコンテンツに割く時間とお金をシフトさせたことが主な原因だ。1日が24時間と決まっている以上、新しいコンテンツが登場すれば、既存コンテンツに割かれる時間とお金は減る。ちなみに出版業界は、音楽/映画業界以上に、インターネットの影響を被っている。

 音楽が売れなくなったもう1つの、そしておそらく最大の理由は、ユーザーが音楽に触れる機会が減っていることだ。インターネットの影響もあり、テレビの視聴率は以前と比較すると低下している。視聴率が下がればタイアップ効果も低下する。タイアップ曲が売れなくなっても不思議ではない。

 その一方、音楽はインターネットから“距離”を置いている。例えば、日本のWebサイトで音楽をコンテンツの一部としているのは例外的なサイトだ。歌手のオフィシャル・サイトでさえ、音楽(その歌手の曲)を公開していない。CD販売サイト最大手のAmazon.co.jpで試聴できる国内制作CDは、一体何枚あるだろう(画面1)。聞こえてこない音楽を買う人は少ない。日本の音楽業界は、インターネットというチャンスをみすみす逃しているのだ。


画面1:Amazon.co.jpでも視聴できる国内制作CDは少ない。「オススメ」されても聞いたことのない曲を買う人は少数派だろう

  
 コンテンツの販売は、「カツオの一本釣り」と同じだと筆者は考えている。ある程度コンテンツを公開することがまき餌となり、コンテンツが売れる仕組みだ。その比率がどれくらいかは明確ではないが、コンテンツの売れ行きを伸ばすには、効果的なまき餌ができるかどうかにかかっているのではないだろうか。

 ところが、デジタル化が普及して以降、コンテンツ販売サイドに「最近はまき餌だけタダ食いされることが多いから、まき餌を減らそう」という傾向が強まっているように感じられてならないのだ。

 まき餌を減らせば、釣れる魚は減る。デジタル時代の到来で、以前よりも“まき餌効率”が落ちたということはあるかもしれない。しかしそれを補う方法は、より大量にまき餌をまくこと以外ないのではなのだろうか。

*  *  *

 古くはCCCD※7)問題、そしてiPod課金、コピー・ワンス、ダビング10と、技術が進化するに伴って著作権者側と消費者側との関係はギスギスした問題が目立つようになった。著作権者側が「著作権の侵害は文化の崩壊」と声高に叫ぶほど、消費者側にはしらけた雰囲気さえ漂う。

 本来、文化は受け手側が愛し、受け手側がはぐくむものであって、著作権者側から押しつけられるものではない。法制度での保護が必要な文化は、はたして受け手側に愛されていると言えるのだろうか。法制度で保護できるのは、「コンテンツの著作権保護」という「エコシステム」であり、「文化」そのものではない。

 一連の騒動で最も傷ついたのは、著作権者側と消費者との信頼関係だ。それがさらにコンテンツの衰退を招く。そんな悪循環だけは起こしてはならない。

※7 CCCD(Copy Control CD, Copy-Controlled Compact Disc):2002年に登場した、著作権の保護を目的に、コンテンツをPCにコピーできないよう導入された技術、または同技術を搭載しているCD。音質の低下や再生機器への悪影響などユーザーからの評判が悪く、現在ではEMIミュージックなど数社が採用しているのにとどまる。


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