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【連載】
未来的テクノロジー・ベスト10

第6回 さまざまなシーンでの活用が期待される、インクを使わない印刷技術「ZINK Paper」

(2008年01月25日)

「Computerworld Horizon Awards」は、米国の研究機関やITベンダーのR&D部門などが、近い将来の実用化・製品化を目指して開発した最先端テクノロジーを読者に紹介すべく、2005年に創設されたものだ。本連載では、2007年度の“受賞作品”を一挙に紹介する。開発者たちのコメントから、イノベーション創出の最前線、そして企業コンピューティングの明日を感じ取っていただきたい。今回紹介するのは、さまざまなシーンでの活用が期待されるインクを使わない印刷技術、米国Zink Imagingの「ZINK Paper」だ。

Mark Hall
Computerworld米国版

さまざまなシーンでの活用が期待されるインクを使わない印刷技術
ZINK Paper
米国Zink Imaging http://www.zink.com

 活版印刷技術の発明者として知られるヨハネス・グーテンベルグであれば、米国マサチューセッツ州ウォルサムにあるZink Imagingの面々を異端者と見なしただろう。何しろ同社は、インクを使わない印刷技術を発明し、1456年に初めて聖書が印刷機で刷られて以来の印刷技術の基本要素を排除したのだ。ちなみに「Zink」という社名は「zero ink」の略称だ。

写真2:Zink技術を実装することで撮影だけでなく、印刷も可能にしたデジタル・カメラ

 「秘密は紙にある」と、ZinkのCTO、スティーブン・ハーチェン(Stephen Herchen)氏は種を明かす。同社の科学者らは、インクの代わりに印刷技術におけるもう1人の主役である「紙」に着眼し、その非凡な能力を授けたわけだ。

 Zinkは1990年代に米国Polaroidの社内プロジェクトとしてスタートした。その後の2005年、同社はZinkを完全な独立組織としてスピンアウトした。

 Polaroidが考案し、Zinkが完成させたこのテクノロジーは、無色の色素結晶が無数に並ぶ層の上にポリマー・コーティングを施した紙を用いている。色素結晶を異なる温度かつ一定の間隔で加熱すると、さまざまな印刷装置で用いられるシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックという色になって紙に溶け込むという仕組みだ。このプリントの耐久性は高く、長期保存にも適しているという。

 今年初めにカリフォルニア州パームデザートで開催されたコンファレンスでHerchen氏は、火をつけたマッチに白い紙をかざし、結晶が溶けてさまざまな色に変化する様子を筆者に見せてくれた。

 Herchen氏によると、この開発プロジェクトに参加した化学者と物理学者は、Zink設立後に入社した者も合わせて50名程度になるという。彼らは、長い試行錯誤の期間を経て、紙の上でコントロールできる分子の組み合わせを作り出すことに成功した。完成した成果物は、「外観も雰囲気も普通の写真と同じだった」と同氏は振り返る。

 この紙を使うことに付随するメリットがもう1つあるとHerchen氏は語る。それは、インク・カートリッジの廃棄という環境に問題がある行為から、消費者が解放されることだという。

 米国IDCのアナリスト、ロン・グラーツ(Ron Glaz)氏は、このテクノロジーの革新性は認めながらも、すぐに既存のプリンタに取って代わるとは考えていない。「これは、ニッチ市場向けの製品だ」と同氏。

 ZinkのCMO(マーケティング最高責任者)、スコット・ウィッカー(Scott Wicker)氏は、Glaz氏の意見には異を唱えないが、このテクノロジーのユニークな点は「これまでは考えられなかったようなシチュエーションで、印刷が可能になることだ」と指摘する。インク・カートリッジを使わないため、デジタル・カメラのような小型デバイスにプリンタ機能を組み込めるというわけだ。

 Wicker氏によると、同社で製造できる用紙サイズに制限があるわけではないが、今のところ市販されているものは、2×3インチ(約5.1×7.6センチ)のサイズとなっている。



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