【 ここから本文 】

セキュリティ・マネジメント

ソーシャルブックマークに登録 : Yahoo!ブックマークに登録 はてなブックマークに登録 del.icio.usに登録 newsing it!に登録 Buzzurlにブックマーク livedoorクリップに登録 Slashdotにタレコむ イザ!ブックマークに登録 Twitterでつぶやく
print 印刷用ページの表示


セキュリティ・マネジメント

ブルース・シュナイアー氏が語る「セキュリティ・シアター」の功罪

実際のリスクとのずれを生む一方で、過度の恐怖を軽減する効果もあり

(2008年03月31日)

Bruce Schneier氏

 3月26日の夜、著名なセキュリティ専門家ブルース・シュナイアー(Bruce Schneier)氏がミネソタ大学構内のワイスマン美術館で講演し、セキュリティの心理的側面に関する見解や、セキュリティについて実際的に考える必要性を語った。

 Schneier氏の講演は、同美術館で開催されていたポール・シャンブルーム(Paul Shambroom)氏の写真展に合わせて行われた。

 この写真展は、産業、ビジネス、コミュニティ、軍事におけるさまざまな力のダイナミズムを表現した写真を集めたものだった。こうした写真展と合わせてSchneier氏の講演が行われたのは、同氏の関心分野が長年の間に、暗号技術やコンピュータ・セキュリティから、個人の安全、犯罪、企業の安全、国家安全保障の検証へと広がってきたことに関係がある。

 Schneier氏の講演のテーマは「セキュリティ・シアター」だった。これは同氏がよく使う言葉の1つで、人々に安心感を与えるように設計されているものの、必ずしも安全向上につながらないセキュリティ対策を表している。

 「実のところセキュリティは、感覚と現実という2つの異なるものを指している。両者はまったく違う」と同氏。「安全ではないのに安全と感じることもあるし、安全とは感じないのに安全であるということもある」

 Schneier氏はセキュリティ・シアターの一例として、医師の処方箋なしで買える市販薬の不正開封防止包装を挙げた。これは、1980年代に非ピリン系鎮痛解熱剤のタイレノールに毒物が混入される事件が起きたのをきっかけに導入されたものだ。同氏によると、こうした包装は、異物混入を防ぐ目的からすると、効果的な対策というよりもセキュリティ・シアターだという。注射器などを使った混入が可能なためだ。

 セキュリティ・シアターは、時間や費用がかかるほか、本当のリスクに対する効果的な対策への取り組みから注意をそらせてしまうという点で危険である。とはいえ、セキュリティ・シアターは悪いことずくめではないと、Schneier氏は語った。現実に対する過度の恐怖を軽減するためにセキュリティ・シアターが利用され、良い役割を果たす場合もあるという。

 例えば、医師の処方箋なしで買える市販薬(数学的には、異物が混入されるリスクはきわめて小さい)を消費者がより安心して購入できるようにするという目的からみると、不正開封防止包装は、より現実に即した安心感を人々に与えるのに役立ってきたと、同氏は説明した。

 またSchneier氏は、セキュリティ・シアターが良い役割を果たした例として、2001年9月11日の同時多発テロの後に行われた、空港への州兵の動員も挙げた。州兵の銃には弾丸が込められていなかったため、州兵は安全対策上はかなり無力だった。だが彼らの存在は、飛行機の利用に対する人々の不安軽減に貢献した。当時はこうした不安の払拭が重要だったのだ。

 Schneier氏は、セキュリティの感覚を、数学的なセキュリティの現実と一致させることの重要性を強調した。「実態以上に安全と感じている場合、その安心感は錯覚ということになる。実態以上に危険を感じている場合も、その不安感は錯覚だ」

 人々がより多くの情報を吸収し、実際のリスクと効果的な対策についての認識が、事実に基づく情報によって進んでいけば、セキュリティの感覚と数学的なセキュリティの現実はおのずと一致していくと考えられる。

 だがもちろん、事はそれほど単純ではないと、Schneier氏は注意を促す。人々は、センセーショナルな報道を行うメディア、キャリアを守ろうとする政治家、製品を売ろうとするベンダーなど、さまざまな情報提供者の事情に応じてバイアスがかけられたデータを受け取らざるをえないからだ。

 それぞれ事情があるからといって、個々の情報提供者に悪意があるというわけではないが、このことは、セキュリティのトレードオフ、つまりリスクと投資のトレードオフが個別的なものであることを示していると、Schneier氏は語った。「さまざまなステークホルダーがセキュリティのトレードオフを検討しており、そこにはそれぞれの理屈がある」

 さらに、「非常に多くの場合、セキュリティのトレードオフに関する判断は、セキュリティ以外の要因に基づいて行われる」と同氏は付け加え、米国がパスポートの印刷をタイの企業にアウトソーシングするという先週のニュースを引き合いに出した。「これは、セキュリティの観点から見れば、ばかげたアイデアだ。だが、コスト削減効果は大きい」と、同氏は皮肉を込めて語った。

(Ann Bednarz/Network Worldオンライン米国版)




関連記事

▲ページの先頭へ戻る


Enterprise Client Strategy 2010

【戦略的なクライアント管理でTCOの削減を――「Enterprise Client Strategy 2010」レポート

各セッションの講演レポート公開中!

注目のホワイトペーパー

NEC

仮想化環境の現状と課題――求められるのは高可用性

仮想化環境でも業務システムを止めないために

日立製作所

中堅中小企業が知っておくべきPC運用管理の勘所

〜運用コスト削減とセキュリティ強化を同時に実現するために〜

日立製作所

中堅中小企業が押さえておきたいIT管理の重要ポイント

〜経済情勢の変化や顧客ニーズの多様化に柔軟に対応するために〜

日立製作所

中堅中小企業の経営基盤強化を支えるIT統合管理

〜コンパクトでスピーディな経営の実現のために〜

Computerworld Special

シンプルな運用管理が仮想化環境リソースを最大活用に導く

仮想化からクラウドまで、シームレスな運用管理を実現

仮想化環境だからこそ求められる高可用性 CLUSTERPROなら停止要因の約90%に対処可能

複雑化する仮想化環境の課題に対する“最適解”


Computerworld BLOG

進化するビジネス・モバイル

トレンド最前線

注目されるビジネス・モバイルPCの市場動向を探る

WiMAX搭載モバイルPCの実力

モバイルWiMAXを取り巻くワイヤレス・ネットワーク環境の現状

インテル vProテクノロジーで実現する“鉄壁ビジネス・モバイル”

モバイルPCが抱えるセキュリティの課題とは

最新モバイルPCとWindows 7で実現するビジネスの堅牢性

Windows 7 Enterpriseが提供する企業向け機能を徹底紹介

Weekly Ranking

集計期間:03/14〜03/20



Computerworld Global
米国
英国
中国
ドイツ
オーストラリア
シンガポール
その他の国