【 ここから本文 】
- TOP
- > Topics : 仮想化
- >
仮想化
ソーシャルブックマークに登録 :
印刷用ページの表示
ストレージ仮想化技術の“現在”を探る
最も成熟し、製品も豊富にそろうレイヤにどう取り組むべきか
(2006年06月16日)
効果的な導入のためには課題の絞り込みが重要
ESGのギャレット氏の調査では、社内で6つ以上のストレージ・システムを運用している環境に仮想化を導入した場合、複数の項目でコストを削減できたという結果が出ている。具体的には、ハードウェア・コストが平均23.8%減、ソフトウェア・コストが16.2%減、そして管理コストが19.3%減である。
ギャレット氏は、ストレージ仮想化では、導入後の運用は比較的容易だが、稼働させるまでに苦労が多いと指摘する。そこで同氏は、まず、特定の課題に焦点を絞ることを勧めている。「特定の課題を仮想化で克服し、経験を積むことで、仮想化の適用範囲を広げていくことができる」(ギャレット氏)
この方法で成功したのが、米国テキサス州ヒューストンにあるベイラー医科大学だ。同大学では2年前、ストレージの利用効率の向上と管理コストの削減を目的に、数十台のファイル・サーバと、UNIXおよびWindowsサーバに直結されたERP用のDAS(Direct Attached Storage)を統合することを決定した。ベイラー医科大学のエンタープライズ・サービス/メインフレーム・システム担当ITディレクター、マイク・レイトン氏によると、同大学ではその際、それまでのストレージに対する投資を捨てて、すべてHDSのストレージにリプレースした。ハードウェアを単一機種に統一することで、仮想化におけるリスクを抑えたわけだ。
現在、同大学のシステムには、医療データと大学の業務データを含め、200TBものデータが格納されている。今のところ、仮想化の主な目的はストレージ・リソースをプールすることだが、今後は、データ・ライフサイクル管理を実装することも検討しているという。これが実現すれば、治療期間中の患者の医療データはすぐに利用できる高価なストレージに置いておき、治療が終わったら安価なストレージに移動させるといったILMが容易に行えるようになる。
一方、ダラス・フォートワース国際空港では、搭乗者リストや到着時間、手荷物追跡、ゲート情報といった業務データを、Oracle RAC(Real Application Clusters)を使用して2系統のSANに格納していたが、ストレージ間でデータを移行するプロセスに時間がかかりすぎていたと、同空港のターミナル・テクノロジー担当アソシエイト・バイスプレジデント、ジョン・パリッシュ氏は振り返る。もし一方のSANがダウンした場合、直ちにもう一方のSANに切り替わらなければ、搭乗手続きや手荷物の処理が遅れることになる。そこでデータコアのSANsymphonyアプライアンスを導入したところ、Oracle RACに対してSANを1つに見せることが可能になり、遅延の問題も解決できたという。
同様の問題に悩まされていたのが、オンライン小売業者のFreeze.comだ。ITディレクターのカイル・オーミー氏によると、同社では在庫管理の分析のために、SQL Serverで構築した400GBのトランザクション・データベースとリポート用データベースを同期させる必要があった。しかし、SQL Serverのリソース制限のために、この処理が実行できなかったという。データベースの定期的なミラーリングも試みたが、リポート用データベースの更新が遅く、分析には使えなかった。そこでファルコンストアのソフトウェアを導入し、ストレージを1つの仮想ボリュームに統合したところ、トランザクション・データベースのスナップショットをリポート・データベースに送ることが可能になり、データ全体を移行することが不要になったという。
米国IBM ストレージ・システムズ&テクノロジー・グループ ゼネラル・マネジャー アンドリュー・モンショー氏
「2005年は、IBMが注力してきたストレージ仮想化の有効性が再認識された」
ルーカス・ミーリアン
米国IBMでストレージ・システムズ&テクノロジー・グループのゼネラル・マネジャーを務めるアンドリュー・モンショー氏は、先ごろ、Computerworld米国版のインタビューに応じてくれた。モンショー氏は、IBMのストレージ事業を統括する立場にあり、インタビューでは同社のストレージ戦略について語った。ここでは、ストレージ仮想化に関する話題を中心に、そのエッセンスを紹介する。
──ストレージ仮想化に関して、2005年にはどのような変化が起こったか。
モンショー氏:2005年には、ネットワーク・アプライアンス(ネットアップ)は仮想化対応製品群のブランド名を「V-Series」に変更してイメージ・アップを図り、EMCも仮想化技術を重視し始めた。このような動きが出てきたのは、当社が注力してきたストレージ仮想化の重要性が再認識されたことの表れだと考えている。
また、IBMが掲げる「インフォメーション・オンデマンド」というビジョンの有効性が、多くのユーザー企業によって証明され始めたということが、当社にとって重要な変化だった。当社のストレージ仮想化ソフトウェア「SAN Volume Controller」の導入企業は1日当たり4〜5社の割合で増え、すでに約1,600社に上る企業が利用している。
──ストレージ仮想化を導入するユーザー企業は、この技術をどのように利用しているのか。
モンショー氏:データの移行やストレージ利用効率の向上を目的に使用しているケースが多いと考えられるが、実のところ、大半の企業が社内にあるストレージ容量を把握することさえできていない状況だ。そのため、まず最初に、ストレージ・リソースの有効利用に向けて、社内のストレージ容量を把握するという目的でストレージ仮想化を導入するケースも少なくない。
──ストレージ市場では、ミッドレンジ製品の販売台数が伸びる一方で、ハイエンド製品の販売台数が落ち込むという傾向が見られる。IBMのストレージ製品にも、同様の傾向が表れているのか。
モンショー氏:当社においては、そのような傾向は見られない。確かに、ハイエンド・ストレージから、ミッドレンジ製品をクラスタ化したシステムへの移行が進む可能性はある。しかし、大型のハイエンド製品とミッドレンジ製品とでは、求められる要件が本質的に異なっており、それは今後も変わらないだろう。
──ディスク・ストレージがテープ・ストレージの市場を侵食しているという見方があるが、これについてはIBMの製品はどうか。
モンショー氏:2005年における当社のテープ・ストレージの売れ行きは、ここ数年間で最も好調だった。この分野の技術革新は目覚ましく、それは今後も売上げの拡大を後押しすることになろう。また、法規制への対応のために、ユーザー企業は大量のデータを安全に長期間保管する必要に迫られている。そうしたニーズもテープ製品の売上げ拡大につながっていると考えられる。
──2006年のストレージ戦略において、IBMはM&A(合併・買収)を進める予定はあるのか。
モンショー氏:有力企業との提携やM&Aは積極的に推進したいと考えている。当社は2005年4月にネットアップと提携し、6月にはオープンソースのストレージ管理プラットフォームの開発を目指す「Aperi」プロジェクトも始動させた。Aperiに対する周囲の関心はきわめて高く、すでに多くのベンダー/技術者が参加している。こうした取り組みを発展させるためにも、M&Aは有意義な選択だ。
──それは、ネットアップを買収する可能性があるということか。
モンショー氏:それについては、コメントを控えたい。ただし、提携後、ネットアップとは良好な関係を保っており、お互いの技術をどのように活用していくかに関して話し合いを続けている。例えば、ネットアップが2005年6月に買収したデクルーの暗号化アプライアンス技術「DataFort」をIBMが販売することも検討している。
自己管理型には遠いが着実に進歩していく
現在のストレージ仮想化は、2000年ごろから喧伝されていたような、自動化された自己管理型ストレージ・インフラというレベルには至っていないが、少なくともその第1段階には達していると、ガートナーのザフォス氏は指摘する。しかし、自己管理型ストレージ・インフラの実現には、まだ時間がかかりそうだ。
その理由の1つは、ベンダー側の都合にある。仮想化されたストレージ・プールをソフトウェアで管理するための標準仕様が普及した場合、ハードウェア事業から得られる利益が小さくなるため、ストレージ・ベンダーは、標準仕様をサポートすることに慎重にならざるをえないのだと、ザフォス氏は説明する。
一方、データコアのCEO、ジョージ・テイクセラ氏は、ストレージ・ネットワーキング技術の普及促進を目指す業界団体であるSNIA(Storage Networking Industry Association)が策定した標準仕様をOSベンダーが採用すれば、状況が変わる可能性があると語る。これに関してIDCのヴィラー氏は、「Windowsは、5年以内に中規模環境向けのストレージ仮想化機能を実装する可能性がある」との予測を示す。
また、より大型のストレージ仮想化を阻む要因として、大規模企業が新技術の導入に消極的だということがある。大規模企業は、ストレージ仮想化の恩恵を最も受けられるはずだが、失敗した場合のリスクを考えて導入を躊躇しているのだ。
第3の理由は、ストレージ仮想化を支援するツール類がまだ十分に成熟していないということだ。現在のツールは、一元管理コンソールに主眼が置かれているが、将来的には、各種の自動化や、ストレージのプロビジョニング、データ移行の管理などが追加されるだろう。ただし、この種のツールの登場はまだ先になると、マクデータのソリューションおよびテクノロジー担当ディレクター、トム・クラーク氏は見ている。
しかし、これらの要因は、現段階でストレージ仮想化が企業にもたらすメリットをスポイルするわけではない。今後もベンダーがストレージ仮想化に注力するのは確かで、長期的には、企業はさらに広範囲に仮想化の恩恵を受けられるようになるだろう。
米国EMC 最高開発責任者 マーク・ルイス氏
「壮大な仮想化ビジョンを掲げるのではなく、ストレージ仮想化にいっそう注力する」
ルーカス・ミーリアン
米国EMCは、SAN仮想化技術「Invista」(旧称:Storage Router)やNAS仮想化プラットフォーム「Rainfinity Global File Virtualization」といったストレージ仮想化製品を提供するなど(両製品とも、国内では2005年2月9日発表)、ストレージ仮想化への注力を強めている。Computerworld米国版では、同社で最高開発責任者を務めるマーク・ルイス氏から、ストレージ仮想化に関する同社の戦略について話を聞いた。
──鳴り物入りで登場したInvistaだが、ユーザー企業への導入はどのようなペースで進むと考えているか。
ルイス氏:当社は、Invistaがきわめて重要な技術だと考えているが、この先1、2年でこの技術の普及が一気に進んだり、大規模な導入が多く生じたりすることはないと思う。一般的なペースで普及するだろう。ただし、すでに2005年から、テスト環境でInvistaの評価作業を進めてきたユーザー企業も多数存在している。そうしたユーザー企業において本番環境への移行が問題ないと判断されたため、一般出荷に至ったわけだ。
──2005年8月に買収したレインフィニティのNAS仮想化技術は「Rainfinity Global File Virtualization」として製品化されたが、これまでのEMC製品とどのように統合されているのか。
ルイス氏:これについては、特に統合する必要があるわけではない。レインフィニティの技術は、複数のプラットフォームに対して有効であり、EMCとネットワーク・アプライアンス、さらにはWindowsベースのファイルシステムといった枠を越えて、シームレスな仮想化を実現できるものだ。
──InvistaやRainfinityでストレージ仮想化に力を入れる一方でEMCは、2005年10月にWindows Storage Serverを搭載したNAS「NetWin」シリーズの販売中止を決定した。これは、EMCがWindowsベースのNAS製品から離れようとしているということを意味するのか。
ルイス氏:そうではない。当社はこれまで、マイクロソフトと提携関係を保っており、今後も可能なかぎりさまざまな分野で提携していきたいと考えている。このNetWinシリーズについては、当初、NAS製品ラインを拡充する1つの方法として考えていたが、当社にはこの分野は適していなかったということだ。
──IBMとシスコシステムズが協力してデータセンターの仮想化を進めるなど、多くのベンダーがこの分野に力を入れている。こうした動きに対して、EMCはどのようなアドバンテージを示していくつもりなのか。
ルイス氏:当社の子会社であるヴイエムウェアのサーバ仮想化技術が1つのカギになるだろう。つまり、EMCはインテル・ベースのすぐれた仮想化技術をすでに持っているということであり、これが他社との大きな差別化ポイントとなる。
また、これまで当社は、ストレージ仮想化を実現するために、Invistaの開発に多大な労力を払ってきており、すぐれたNAS仮想化技術を持つレインフィニティも買収した。さらに、ネットワーク管理ソフトウェア・ベンダーのスマーツを2005年2月に買収し、仮想化環境を統合する技術も有することになった。他のベンダーは壮大なビジョンを掲げているかもしれないが、当社は現在、ストレージ仮想化に特化して、堅実に取り組みを進めているところだ。































