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仮想化

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「仮想化時代」に到来する3つのテクノロジー・トレンド

グリーンIT/プロビジョニング/自律コンピューティング

(2008年01月17日)

プロビジョニングがもたらす価値

プロビジョニングとは

 仮想化の延長線上にある重要なテクノロジーにプロビジョニングがある。ただし、IT業界においてプロビジョニングという用語の定義は、かなりの期間にわたって安定していなかった。この用語が登場した当初は、通信事業者においてネットワーク関連設備を事前に用意しておき、顧客の回線開設の要求に迅速に対応できるようにすることを意味していた。また、「収容設計」という訳語が当てられることもあるが、英語の「provision」のもともとの意味として「備蓄する」というものがあり、それに由来する用法と考えられる。

 しかし、時の経過とともに、メインの意味は「準備」ではなく「提供」に変わっていったようだ。今日のIT業界において、プロビジョニングと言えば、ほとんどの場合、リソースの動的な割り当てという意味で使われている。「ダイナミック・アロケーション」という用語のほうがなじみのある方も多いかもしれない。

 また、プロビジョニングという用語が使われるときには、単なるリソースの動的な割り当てに加えて、関連作業も同時に行われるというワンストップ性が提供されるケースが多い。例えば、サーバの世界では、サーバのハードウェア・リソース(CPU、メモリ)の割り当てと併せて、OSなど関連ソフトウェアの導入設定作業も同時に行い、ユーザーが直ちに利用可能な状態にする機能をサーバ・プロビジョニングと呼ぶことが多い。

 なお、仮想化技術を採用せずにプロビジョニングを行うことも原理的には可能である。物理的サーバ(あるいは、ブレード・サーバにおけるブレード)を未使用状態で備蓄しておき、ユーザーの要求に応じて立ち上げ、利用可能にする場合もプロビジョニングと呼ぶことができよう。とはいえ、仮想化技術による物理リソースと論理リソースの疎結合化が実現されて初めて、プロビジョニングは、柔軟性・俊敏性の面での価値を発揮できるようになる。その意味で仮想化技術とプロビジョニングは表裏一体の関係にある。
 

ストレージのシン・プロビジョニング

 プロビジョニング関連で最近、注目度が高まっている技術の1つ、シン・プロビジョニング(Thin Provisioning)について、ここで紹介しておこう。

 シン・プロビジョニングとは、ストレージのプロビジョニングにおいて、より細かい単位でのプロビジョニングを行い、ストレージ・リソースの利用率を大きく向上させるための手法である。この分野では、3PARがパイオニア的存在にあるが、日立製作所(および、同社のOEMパートナーであるHPとサン)、EMCなどの大手ストレージ・ベンダーも、シン・プロビジョニング機能を備えるストレージ製品の提供を開始している。

 ストレージの世界において従来型のプロビジョニングを行う際に典型的に見られる問題の1つが、「オーバープロビジョニング」である。つまり、業務アプリケーションの運用管理担当スタッフがITインフラ運用管理担当スタッフに対して、必要以上に余裕を持ったストレージ容量を要求してしまうために、全体として(割り当てはされているが)利用されていないストレージ容量が大量に発生し、ハードウェア・リソースの利用率向上という仮想化技術の本来のメリットを相殺している状況である。

 従来型のプロビジョニングだけでは、物理容量に対する割り当て済み容量の割合という数値で見た利用率を上げることはできても、物理容量に対する実際の利用容量の割合という数値で見た利用率は必ずしも向上できないことがある。シン・プロビジョニングは、このような問題を解決するものだ。
 

ジャストインタイム型の購買を実現

 図3に、シン・プロビジョニングの仕組みと効果を示した。


図3:シン・プロビジョニングの概念と効果

 シン・プロビジョニングでは、要求に対してストレージ容量の割り当てを行う際に要求されたスペースをすべて物理的に割り当てず、その一部だけを割り当てる。残りの容量の物理的割り当ては、実際にアプリケーションがストレージ容量を使用した時(最初の書き込みが行われた時)に初めて行うのである。つまり、使われていない部分に対して物理的な割り当てが行われることがない。これにより、真の意味でのストレージ・リソース利用率を高めることができる。各アプリケーションの追加ストレージの要求に迅速にこたえるために、ある程度の共通バッファ容量は用意しておく必要があるが、ストレージ・ハードウェアの購入、あるいはオフラインになっていたストレージのオンライン化を、本当に必要になるタイミングまで先延ばしにすることが可能になる。

 価格が継続的に低下していくことが確実なストレージ・ハードウェアの購入を早め早めに行うことの必然性は低い。ストレージの購入は、必要な時に必要な容量だけを確保するジャストインタイム型の購買が基本だ。シン・プロビジョニングにより、これに近い購入のタイミングが実現できる。また、リソースの利用率が高いということは、前節で行った説明と同様に、グリーンITにも貢献する。アプリケーションに割り当てられているだけで実際には使われていないディスクが無駄な電力を消費したり、熱を発生したりすることが抑制されるからである。

 実のところ、シン・プロビジョニングの考え方は、メインフレームにおけるストレージ割り当ての手法に類似している。メインフレームの世界ではジョブ(プロセス)がストレージ・リソースを要求するときには、一度にすべての容量を要求するのではなく、初期容量と段階的な追加容量(エクステント)を指定して要求することが可能である。そして、ジョブが実際に追加ストレージ容量を必要とするまでは追加の割り当ては行われない。このような仕組みは、ストレージが比較的高価であった時代において最大限のリソース利用率を達成することを目的としていたわけだが、同様の仕組みが今日においても価値を発揮していることは興味深い。

 なお、シン・プロビジョニングの実装形態によっては、副次的効果としてストレージ・システムの性能向上が得られることがある。シン・プロビジョニングを実現するためには、ストレージ容量を細かい単位(チャンク)で管理する必要がある。そして、論理的(仮想的)には連続して見えるストレージ領域が、物理的には多数のドライブに分散したチャンクから構成されることになる(ワイド・ストライピングと呼ばれる 注6)。この結果、データ・アクセスを複数のドライブに対して同時並行的に行うことができるようになり、性能を向上できる可能性があるのだ。

注6:図3では、このようなワイド・ストライピングの仕組みを描写できていないが、作図の都合上、ご容赦いただきたい

 
シン・プロビジョニングの考慮点

 シン・プロビジョニングは、仮想化技術の特徴を十分に活用した将来有望なテクノロジーと言えるが、もちろん考慮すべき課題はある。

 第一に、ストレージ容量不足のリスクがある。シン・プロビジョニングのポイントは、実際に使用されている容量だけを割り当て、各アプリケーションで共通のバッファ領域を用意することで全体的なリソース利用率を向上させる点にある。しかし、ほとんどのアプリケーションが同時に追加のストレージ容量を大量に要求した場合には、バッファ領域が不足し、物理的なストレージ容量が不足してしまうリスクがある。

 ストレージ管理者は従来型プロビジョニングの場合よりも、念入りなSRM(Storage ResourceManagement:ストレージ・リソース管理)を行う必要があるだろう。通常は、ストレージ製品を提供するベンダーが適切なSRMツールや容量不足を事前に通知するためのアラート機能を提供している。

 また、前述のとおり、ストレージ領域は、実際には不連続な形で多数のドライブに分散している。このことは、アクセスの並列性向上による性能向上の可能性ももたらすと同時に、特定のドライブにアクセスが集中する“ホットスポット”の発生による性能劣化も発生させてしまうリスクがあることを意味する。よって、このような状況を回避するためのチューニング作業が通常より複雑になる可能性がある。


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