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【解説】
だれもいない「Second Life」
――仮想世界を生かしきれない企業の実態

Webよりも洗練された仮想体験を提供できなければ、ビジネス参入の意味はなし

(2008年04月10日)

水曜日
企業ITとの関連事例を探す

 ここまでの感想だが、これからSecond Lifeをやろうとしている読者の方々は参考書を購入するか、あるいは上級ユーザーからアドバイスを受けることをお勧めする。私の場合、参考書を片手に悪戦苦闘しながら、何とかアバターの操作に習熟していくことができた。その結果、私は別の場所へ移動する方法(Second Lifeでは空を飛ぶことができる)や外見を変える方法(この世界の住人は男女ともほとんどが若く、派手な格好をしている)、目的のものを探す方法などさまざまなことを覚えた。

画面2:IBM島の中にある「IBM Business Center」。同社のSecond Life支店とも言うべき施設である

 だが、基本操作をマスターし、最初に感じたフラストレーションがほとんど解消されたところで、いったん脇へ置いていた疑問がまた頭をもたげてきた。「ここで私は何をすればいいのだろうか?」「Second Lifeでの成功とは一体何か?」「どうすればそれを見つけられるのだろうか?」

 さて、企業ITと関係のある事例はないかと担当編集者が言い出す前にあちこち探してみると、IBMが所有する島が見つかった(画面2)。ここがどれだけ刺激的な場所であるかを理解するには、糊のきいた白シャツを着てネクタイを締めた1950年代風のIBM社員がいて、壁に“Think”マークが掲げられている様子を思い浮かべてもらえばよい。

 このIBM島では、「IBMシアター I」という巨大な円形の講堂に入ってみた(画面3)。座席にはだれも座っておらず、ステージ上も大きなホワイトボードが置かれている以外、何もない。ホワイトボードには、技術的な事柄がいくつか書かれており、それぞれにWebサイトへのURLが付記されている。問題はURLがハイパーリンクになっておらず、クリックしても何も起こらないということだ。ベンダー各社は、Second Lifeに参入するつもりなら、きちんと動作するものを用意しておくべきだろう。


画面3:たくさんの座席が並ぶ「IBMシアター I」

 さて、気を取り直して小売チェーンを展開するSearsの店舗に行ってみた。すると、決して精巧とは言い難いが、Searsで取り扱っているさまざまな製品の画像が並んでいて、画像をクリックするとSearsのWebサイトへジャンプすることができた。しかも、製品の詳細情報が書かれた「製品カード」を入手し、テキスト・ファイルとして保存することもできた。これはすばらしいと思ったのだが、このSearsの施設でもIBMの施設と同様、私以外の訪問者はだれ1人としていなかった。

木曜日
操作性は昔のPCゲームと同レベルか

 コンピュータを起動している間、PCゲームの草分け的存在である「King's Quest」を娘のために購入したときのことを思い出していた。1987年のことである。King's QuestはDOS上で動作するアドベンチャー・ゲームで、私のPCにはマウスが付いていなかったため、4つの矢印キーをあわただしく押してキャラクターを操作する必要があった。

 しかし、それから20年後に登場したSecond Lifeは、King's Questからほとんど進歩していないように見える。画像はいまだにぎこちなく平面的で、矢印キーによる操作性の低さも相変わらずなのだ。

 ただし、これには理由がある。Second Lifeには常時何万人というユーザーが接続しており、Second Lifeを運営する米国Linden Researchのサーバは、各ユーザーに対してそれぞれ異なる動的なシーンを送らなければならないのだ。

 3D画像をリアルタイムで本物らしく描画しようとすると、コンピュータに多大な負荷がかかるうえ、ネットワーク帯域を大量に占有してしまう。Second Lifeにここまで求めるのは酷というものだろう。とはいえ、シーンの描画速度はうんざりするほど低速で、私の使用環境(PCはデュアルコアCPUと3GBのメモリを搭載したハイエンド・モデル。回線速度は15Mbps)では、レンダリングに要する時間が1分以上かかることも少なくなかった。また、ログイン中、ハードディスクが絶えず小さなI/Oノイズを発生させていたため、Second Lifeをやるとディスクの寿命が短くなるのではないかと心配になった。

金曜日
商業利用の可能性を探る。しかし……

 Second lifeで感じたいくつかの疑問を解決してくれるIBM社員を探すため、私はこの日、再びIBM島を訪れた。そこで、「FurNation」から来たというきちんとした身なりの狼と長時間チャットをすることができた。

 この狼は、IBMが一般に開放している「サンドボックス」を利用するためにこの場所へ来ているという。サンドボックスとは、Second Life内で利用できるさまざまなオブジェクトを作成するための場所である。Second Lifeには、このようなサンドボックスが数多く存在しており、住人は「インベントリ」(持ち物リスト)を利用して、家具や乗り物、アクセサリーなどの便利なオブジェクトを自由に作成できる。

 私は、Second Lifeで金銭的な収益を上げている企業はあるかと、狼に尋ねてみた。すると狼は、Second Life内にしか存在しないバーチャル企業は毛皮に覆われたアバターや武器などを売ることで金銭的な利益を得ているが、IBMなどのリアル企業は広告活動や求人活動を行っているだけだと答えた。狼は、IBMの求人募集に応募したわけではないようだったが、サンドボックスの提供に関してはIBMに感謝していた。

 描画速度の遅さにいらいらしながら、次に私は、Cisco Virtual Campusへ移動し、トレーニング・センターに入った(画面4)。「Ciscoの従業員とパートナー以外、使用禁止」という看板があったが、それならばなぜ、非公開のイントラネットではなく、こんなところに設置したのだろうか。


画面4:Cisco Virtual Campus内にあるトレーニング・センター

 それはともかく、どのトレーニング・ルームにも従業員やパートナーの姿を見つけることはできなかった。また、書籍やトレーニング資料といったものも見当たらなかった。しかるべき場所にしかるべきものがあると期待するのは、Second Lifeではあまり理にかなったことではないようだ。

COLUMN 1
Second Lifeで見えてきた「バーチャルとリアルの共通課題」

Matt Hamblen/Computerworld米国版

 Cisco Systemsは、開発者とチャネル・パートナーによるバーチャル・ミーティングを1年以上前からSecond Lifeで行っている。筆者は今回、Second Lifeの仮想世界上で行われたCisco主催のネットワーク技術に関するコンテスト「Connected Life」に招待された。

 筆者は、どのような観点から見てもおそらくSecond Lifeの初心者に分類されると思うが、場所を移動したり島やイベントを探したりする方法はほぼ理解している。

 発表会の当日、会場に集まったのは見るからにジャーナリストといった面々やコンテストの受賞候補者、そしてCiscoの社員などである。ほとんどのアバターはビジネス・カジュアルといった格好をしていたが、1人だけワニ姿のアバターもいた。

 1時間ほど続いたイベントは、一言で表現するならば、いささか風変わりなものだった。出席者が空を飛んで会場に出入りしたり、現代風のキャッチーな映像を流す際にはトラブルが起きたりしていた。

 聴衆の多くは、Second Lifeのテキスト・チャット機能で1人、もしくは全員とチャットできるということを理解していないようで、受賞者への喝采とランダムなコメントによって、イベントの進行が妨げられてしまっていた。

 最優秀賞はアミール(Amir)氏が受賞した。アバターで壇上に登場したAmir氏が応募したのは、Ciscoのルータとコマンド・センターを使用して、自宅にあるさまざまな機器を統合する「Personal Digital Butler」というアイデアだ。

 最優秀賞が発表されたあと、出席者はPersonal Digital Butlerを試すことができた。筆者もやってみたのだが、いざ動かそうとするとクライアント・ソフトウェアに負荷がかかり、アバターがその場でフリーズしてしまった。挙句の果てにはSecond Lifeを再起動するはめになってしまった(あとで聞いた話では、多くの出席者がデモを同時に起動しようとしたことが原因だったようだ)。

 全体的な感想としては、このイベントに参加したことで、バーチャル・ミーティングに対する筆者の関心は大いに高まった。しかし、その関心は見せられた内容よりも、「Second Lifeでいかに物事をスムーズに進めるか」という課題に向けられている。

 だが、よくよく考えてみると、現実世界の記者会見でも同じような問題が生じているのではないだろうか。記者たちは、狭く騒がしい会見場に詰め込まれ、押し合いながら囲み取材をしたりしている。現実世界でも仮想世界でも、真実に近づくことは決して容易ではないということだ。


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